舞台はUNIXマシンが1台1億円した1980年代初頭。当時企業でスーパーユーザとして100人程度のユーザを抱えるUNIXマシンの運用を管理していた高野豊氏のUNIXエッセイ。
本書を貫くのは、rootという仕事に携わる著者のプロ意識とUNIXへの愛情。「スーパーユーザというのは、損な役回りである。利口な人は皆逃げてしまい、評論家の役割を演じたがる。したがって、スーパーユーザがなすべきことの第1番目は、あなたの存在と、UNIXを運用管理するというその役割の重要さを、周囲に徹底して知らしむることである」
「今後、UNIXが分散環境へ移行するにしたがい、必要なスーパーユーザの数は急激に増大する。こうしたことを考えるにつけ、スーパーユーザ教育の必要性をつくづく感じるのである」等々、rootに対する深い洞察が折々に現れている。
無駄なシステムのリソースを食いつぶしているユーザにはniceレベルを変えることで対抗したり、「今度やったらあなたのログイン・ディレクトリを封鎖します」という直撃弾を送付したり。CPUの使用時間を元に、ユーザに課金を行い、UNIX機の費用対効果を経営者に説明したり…
rootは常に学び、教え、戦い、守る存在だった。各章の冒頭に据えられた、機関車や飛行場、銃等々のモチーフと、UNIXのシステムや思想を比較した表現も郷愁を感じさせる。「あのころ」を懐かしむ、すべてのUNIX親父必読の名著。